小児科のあれこれ

地方の小児科で感じたこと、勉強したこと、本やグッズのレビューなど

痙攣(特に熱性痙攣)

twitterの痙攣ツイートが予想外に拡散して驚いた私です。

朝に痙攣の講義をした日に痙攣重積が2例搬送され、両方ともてんかん患者さんで痙攣に慣れてたせいか痙攣開始からは1時間以上経っていたと思われる状態での搬送したのでもっと早くて良いんだよという思いでした。

やはり皆さん不安なようですし、熱性痙攣を中心にまとめてみます。私見も入りますので、多様な考え方はあるという前提でお願いします。主に『熱性けいれんガイドライン』(Web版はhttps://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=33)を参考としています。また、細かいてんかん発作までは専門でもありませんし言及を避けます。

基本的には、よほど繰り返している人以外は救急受診して良いのではと思いますし、最初の1、2回で救急車を呼ぶのも仕方が無いと思います。むしろ、発作が長引いている可能性があるときにはさっさと救急車を呼んで欲しいです

なんかものすごく長くなってしまいました…ので短縮版を作りました(2019/9/29)

www.blog.takkuna.com

痙攣は怖い

一般の方はそうお思いだと思いますが、実は医師含めた医療関係者もそうです。twitterの医師の方でもやっぱりそうおっしゃってた方がいますが、僕自身怖いです。

まず、慣れの問題があります。一般の方でいうと、痙攣での搬送で特に多い熱性けいれんを起こす率は日本人だと10%程度と言われていますが、過半数は1度きりなので慣れません。一方で、てんかんで何回も繰り返している子の場合、両親が慣れるので軽症の発作での家庭からの搬送は少なくなります。

医療者側でいうとどうでしょうか?他の病棟からうちの病棟に配置転換になったベテラン看護師が大人の痙攣に心マし始めたということがあったそうです。痙攣に慣れているのは、小児科以外だと、脳神経系を専門とする科(神経内科、脳外科、精神科)、救急救命、救急外来を積極的に診療しているスタッフなどでしょうか?それ以外はあまり慣れていないことがあり、とっさの判断や大丈夫かどうかの判定は難しいかもしれません。

小児科だと痙攣は多く、場合によっては一晩に何人も搬送されるのですが、痙攣が長引く重積は一部ですので多くは来院時は痙攣が止まっています。なのであまり救急を診ていない病院でちょっと慣れかけの、特に運よく重症に当たらなかった駆け出し小児科医は舐めがちとなるかもしれません。「ガイドラインでは慣れた医師が単純性熱性けいれんと診断した場合、検査も薬も必要ないんだ!欧米では予防にダイアップなんか使わない!」と言い切る人は、勉強に真面目だとかえってありがちかなと思います。僕が小児科医になって半年の時に同期で集まった時、勤務内容的に県内で一番きついのではないかと言われている病院で働いていた自分と、県内で一番小児救急を診ている病院で働いていた同期以外は、「痙攣重積の第一選択が無効な痙攣に出くわしたことが無い」と言っていて驚いた記憶があります。

自分の場合は、初めての当直の翌朝に運ばれてきた痙攣の子(元々神経疾患あり)が予後の悪い脳症で亡くなったため、「痙攣怖い」で小児科が始まっています。おそらく、意識清明を確認できない限り、経験を積めば積むほど怖くなる分野だと思います。

痙攣とてんかん発作

痙攣とてんかん発作は重なるところはありますが厳密には微妙に違い、小児神経の教科書では、

  • 痙攣:筋肉が急激に不随意(自分の意志とは関係なく)に収縮する発作。
  • てんかん発作:中枢神経系の異常興奮で全身または体の一部の筋肉の異常運動。

としています。つまり、痙攣のうち、中枢神経系の異常興奮によるものがてんかん発作になります。てんかん発作を繰り返すのがてんかんです。例えば、眼瞼痙攣などは痙攣ではありますが、てんかん発作ではありません。確かに、小児の領域でも脳が原因でない痙攣様の動きとはありますが、小児救急ではあまり区別をせず、「痙攣」と言った場合には中枢神経による痙攣を指すことが実際には多いです。今回も分かりやすくするため混同して記載するので突っ込まないでください…

てんかん発作のうち、脳の一部が興奮するものを部分発作、脳の全体が興奮するものを全般発作と言います。細かく言うときりがないし、本当に深い所については語れませんが、通常の熱性痙攣の発作様式は全般発作に入り、特に全身性強直間代発作と呼ばれる発作の形となるのが特徴です。全身性強直間代発作とは、全身に力が入る強直発作に、びくっびくっとリズミカルに動く間代発作を伴うものです。また、目は上を向き(眼球上転)、口に力が入ってガチガチ言ったり、泡を吹いたりします。呼吸障害も起こり、チアノーゼも伴います。下のイラストのような感じです。

f:id:takkunatonnbo:20190928211435j:plain

また、本当に痙攣なのか?ということもと実は難しいのですが、難しい話になるので今回は省きます。

痙攣対応の基本

全般発作について記載しますが、熱性痙攣だろうがそうじゃない痙攣だろうが基本は同じです。まずは、

  • 安全な場所に移動すること
  • 窮屈な状態にしないよう服やベルトを緩めてあげること
  • 嘔吐をすることも多いので窒息しないようできれば横などを向けてあげること

です。全身痙攣(全般発作)の最初の問題は呼吸で、呼吸しにくくなります。痙攣の対応として、舌を噛むかもしれないから口の中にものを詰めるということはしてはいけないというのは結構広まったのかなと思います。呼吸の問題がある子に口の中にものを詰めてはいけませんし、詰める人の怪我の原因にもなります。あとは可能なら、時間計測と痙攣の発作様式の観察(動画あればなお良し)です。

痙攣が続くと全身痙攣だと呼吸が悪い状態が続き酸欠となりますし、そうでなくても脳の興奮が続くことで脳に障害が起きる可能性があります。また、痙攣が続く(重積)、繰り返す(群発)場合、何らかの重大な病気が潜んでいる可能性があり検査が必要となります。また、痙攣後は一般的に眠ってしまうのが判断を難しくしていますが、痙攣後に意識障害が長引く場合も脳の異常を考えないといけなくなります

『熱性けいれん診療ガイドライン』では、「熱性けいれんにおいて長時間持続する発作、または複数の発作でその間に脳機能が回復しないものを熱性けいれん重積と呼ぶ。30分以上と定義されることが多いが、持続時間の定義を短くすることが検討されている。乳幼児においてはまだ十分なデータはないが、本ガイドラインでは発作が5分以上持続している場合を薬物治療の開始を考慮すべき熱性けいれん重積状態のoperational definition(実地用定義)とする。」と書いてあります(なぜに英語使ったし…)。したがって、

  • 痙攣が5分以上続く場合
  • 痙攣後意識障害が続く場合(痙攣が続いている?脳の障害?)

は救急搬送が原則です。また、意識がはっきりしていても痙攣を24時間以内に2回繰り返した場合も救急受診の対象となります。

部分発作(正確には単純部分発作)の場合、意識があり呼吸もできることが多いですが、それでも長引く場合(目安は10分)や異常に繰り返す場合には救急的に治療をする必要があります。

実は、日本の救急隊はアメリカなどと違って、痙攣を止める薬を使うことができませんが、とりあえずは酸素投与と血中酸素濃度の測定などができます。

とはいっても判断が難しい

正直、慣れていない方が痙攣の時間を計測したり、痙攣のしかたを観察したりするのは難しいかなと思います。実際に見ると慌てる人が多いと思います。僕も痙攣を目の前で見ると、すぐに慌てはしないですがスイッチが入ります。そして最初の薬を使っても止まらないと焦ります。

また、痙攣が止まっているかの判断も難しいです。ご家族の方には、手足を動かしても硬くなくていつも通りのしっかりとした寝息があればほとんどは大丈夫、できれば起こしてみたりしてみてくださいと言っていますが、微妙な時は微妙です。我々の判断基準としては、意識清明で大きい子ならしっかり受け答えができ、小さい子ならおもちゃで遊んだりできるなら安心ですが、眠っている場合は、

  • 瞳孔散大しておらず対光反射がある
  • 四肢の関節をこちらが動かしても硬くない
  • 酸素の数値(SpO2)が正常

といったことで判断しています。夜間の搬送の場合、痙攣後は眠ることが多い以外に、もともと眠いのでなかなか起きないことも多いです。脳波は痙攣持続や脳症の鑑別に有用ですが、時間外に脳波検査ができない病院も多いです。一番は意識清明であることなので、そこを確認するまでドキドキして待つという経験は、ある程度経験のある小児科医だと記憶にあると思います。

 最近診た子も、てんかんがあってちょくちょく発作が起きていた子で、痙攣が止まったように見えたので1時間程度経過をみていたものの目を覚まさないので救急搬送されたという例でしたが、しっかり呼吸ができておらずおそらくは痙攣が続いていたものと考えました。血液検査では二酸化炭素がたまっていました。

ですから、止まったようでも怪しければ受診した方が良いと思います。

 熱性痙攣について

熱性けいれんの基本

熱性けいれんガイドラインでの定義は、

「主に生後6~60か月までの乳幼児期に起こる。通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢神経感染症代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される。以下の3項目の一つ以上をもつものを複雑型熱性けいれん、ないものを単純型熱性けいれんとする。

  1. 焦点性発作(部分発作)の要素
  2. 15分以上持続する発作
  3. 一発熱機会内の、通常は24時間以内に複数回反復する発作」

となっています。通常は生後半年~5歳なので、それを外れるとてんかんを含め、他の原因があることを積極的に考えた方が良いということになります。

アジアに多いのが特徴で、日本だと10%程度、諸外国では2~5%とされています。また、別の発熱で2度目の熱性痙攣を起こす可能性は30%程度と言われていますが、

  1. 両親いずれかの熱性けいれん家族歴 :父または母が熱性けいれんを経験
  2. 1歳未満での発症
  3. 短時間の発熱-発作間隔(おおむね1時間以内):発熱後すぐに発作
  4. 発作時体温が39℃以下

のどれかを満たす場合には繰り返す率が上昇し、逆にどれも満たさなければ繰り返す可能性は15%程度ともいわれています。

また、熱性痙攣患者のうち、それぞれ別の発熱で3回以上の熱性痙攣を起こすのは約10%とされ、大体は6歳ごろまでには熱性痙攣を起こさなくなると言われています。

熱があるということはてんかんの子も発作を起こしやすい状況なので、てんかんとの鑑別が必要となりますが、90%は熱性痙攣からてんかんに移行しないということが知られていますし、一般的には脳波異常もありません。ので、上記の単純性熱性痙攣の場合には、てんかんの検査である脳波検査は必要ないとされています。

熱があるときの痙攣の検査

ガイドラインでは単純性熱性痙攣では検査は必要ないとなっています。ですが、痙攣を繰り返さないか、意識ははっきりしているか、しばらく病院にいてもらって外来で経過をみることが一般的であるため、初回痙攣の時に入院できる病院を受診した場合には血液検査を行うことも珍しくありません。ただし、通常のウイルス感染症+単純性熱性痙攣の場合には、基本的に血液検査では異常はありません。生まれつきの非常に特殊な病気が無いかという検査です。血液検査をする派の人でも、1回目で血液検査をしていれば、2度目以降の熱性痙攣では血液検査をしないという人もいます。

てんかんの場合は、なおさら発作がしっかり止まっていれば何もせずに経過をみます。

また、初めての痙攣で、明らかに脳の一部分が興奮しているような痙攣の場合には、脳に異常が無いか画像検査をすることがあります。

痙攣が長引いたとき、繰り返した時には、CTやMRIなどを行うこともあります。また、止まったらしくても意識がはっきりしない場合は、脳波やMRIを検査したいですが、時間外に検査できない病院も結構あります。脳出血や脳の腫れ、ある程度の脳腫瘍などはCTでもわかるし、緊急的にはMRIより安全に撮影できるので、CTを検査することが多いかもしれません。こういった状態では髄液検査と言って背中に針を刺す検査をすることもあります。

 熱性痙攣の時に考えないといけない病気

ちゃんと止まって意識がはっきりしている場合

基本的には、熱性痙攣かてんかんかという考え方になります。単純性であれば精査の必要性は低いですし、複雑性であれば後日に脳波や場合によってはMRIを検査するかもしれません。

ちゃんと止まらなかった場合や、意識がはっきりしない場合

髄膜炎脳炎、脳症といった、治療しないと危ないが、治療しても亡くなったり後遺症が残ることがある病気を考えます。なので意識評価が重要です。

意識がはっきりしない場合に熱せん妄という良性の意識障害があることも問題を難しくしています。

また、ノロやロタなどの胃腸炎の場合には、痙攣を繰り返すことがありますが、その多くは熱性痙攣と同じくあまり問題とならない痙攣で、ほとんどの場合は薬を飲むと落ち着きます。

意識評価

小学生以上の子供の場合は受け答えができるのでそれで判断しますが、乳幼児では難しいです。年齢相応の動きをしているかということになるのですが、詳しくは発達の知識が必要となってしまいますし、泣いてしまって検査どころでないことの方が多いです。なので、落ち着いている場合には家族だけにして様子を見守り、ご家族に様子は問題ないか聞いたり、おもちゃを渡してちゃんと遊ぶことができるか観察したりします。

しかし、さきほども述べた通り、痙攣後は寝ます。また、夜の場合はただでさえ眠く、子供の場合は食事中などいつでも急に寝はじめ、いったん寝ると起こそうとしてもなかなか起きないという特性があります。なので難しいときは難しいです。

熱せん妄

小児の難しい点です。熱が出た時に変な言動を起こすが脳の感染症ではなくしばらくすると落ち着くというものです。約10%の小児にみられ、もともと夜に突然起きてわめくなどの夜驚症がある子に多いと言われています。睡眠中に2~3分の発作が1回でその後目が覚めたらいつも通りというのが典型的ですが、2、3日続くこともあるらしいです。インフルエンザの時にも、脳症でなくても一時的に異常行動を起こすことがしばしばあることはほとんどの小児科医は身をもって体験しています。

ただ、診断が難しい場合もあり入院で経過を診させていただくことが多いかもしれません。

熱性痙攣への薬

痙攣が続いている重積のとき、痙攣を繰り返す群発の時には痙攣を止める薬を注射します。点滴が上手くできない場合には、筋肉注射や鼻の穴に薬をまく方法もあります。止まらない場合には様々な薬を使い、最終的には完全に眠らせて人工呼吸をすることもあります(まれです)。

main高田製薬HP(https://www.takata-seiyaku.co.jp/medical/product/t_1101/1102/index.html)より

よく使用される薬にダイアップという坐薬があります。これの成分はジアゼパムという睡眠薬の一種で、この注射薬は痙攣重積を止める第一選択薬(一番最初に使うべき薬)の一つです。ただし、ダイアップは効果が出るのも遅く緩やかであるため、起きている痙攣を止める作用はあまり期待できないと言われています。

うちの地域では、痙攣の子が来たら止まってようが止まってなかろうがとりあえずダイアップを突っ込むというのが伝統だったようですが、現在は病院でとりあえず使うという薬では無くなっています。一番大きいのは、睡眠薬、鎮静薬なので、使うと眠くなってしまい、効果が出やすい子の場合はしばらくふらふらしてしまうこともあるということです。ですから、一番大事な意識評価に支障をきたします。

一方で、海外のように家で使える即効性のある痙攣止めの点鼻薬や注腸薬は日本にはなく、救急隊も痙攣止めの薬を使うことができません。病院にすぐ受診できるならそれでもまだ良いかもしれません。しかし、僕は「救急隊です。到着までに1時間かかります。」という電話を受けたことがありますが、もしその間ずっと痙攣しているとと思うとぞっとします。そういう場所は消防署からも遠いでしょうから、ずっと痙攣していたとすれば1時間半とか2時間とかになります。幸いその患者さんは救急隊が到着した時には痙攣は止まっていましたが…

そういう場合にはダイアップしか使える薬が無いのです。なので、「重積したら使ってね」と渡すこともあります。

熱性痙攣の予防

日本で一般的に予防に使用されているのはダイアップです。発熱時に使用することで予防効果があります。具体的には37.5℃以上になった場合に使用し、発熱が続いていれば8時間後に使用します。熱性痙攣を繰り返す子に使用されてきました。

ただし、原則で言えば「重積しない限り熱性痙攣を繰り返しても基本的に問題なし」となります。アメリカなども予防薬を使用しないのが一般的なようです。なので、思い切りの良い人やアメリカが好きな人には予防薬は使わないという人もいます。

しかしながら、何度も痙攣することによる家族の負担はどうなのでしょうか?それに、医療事情も考えずにアメリカに盲従するのも考えものです。だってアメリカには即効性のある家庭用の痙攣止めの薬があり、救急隊も痙攣止めの注射薬を使用できるのですから。

短い痙攣なら良いですが、次に重積しないとも限りません。実際、てんかん患者さんではありますが、小さいころからてんかんがあり、これまで重積しなかったのに10代になって初めて重積して人工呼吸全身麻酔になった患者さんが最近いらっしゃいました。

なので、ダイアップによる熱性痙攣予防は日本ではスタンダードです。ただ、みんな使うわけではなくて、ガイドラインで薦められているのは、

1)遷延性発作(15分以上)

 または

2)次のi~viのうち、2つ以上を満たした熱性痙攣が2回以上反復した場合

 i. 焦点発作または24時間以内に反復する

 ii. 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常、発達遅滞

 iii. 熱性痙攣またはてんかんの家族歴

 iv. 12カ月未満

 v. 発熱後1時間以内での発作

 vi. 38℃未満での発作

となっています。「これ以外は適応とならない」とおっしゃっている方も見受けますが、ガイドラインには地域性や家族の不安なども考慮する必要があるという記載もあります。ただ、熱が出る前(あるいは気づく前)に痙攣するパターンもあって、その場合は、てんかんの薬で予防することになります。ダイアップが無効な場合もてんかんの薬を使います。

もう一つ論点となるのが、痙攣が止まった後のダイアップです。実は熱性痙攣は止まった後にその熱が続いているうちに10~20%の確率で再度痙攣します。この場合、群発ということになるので救急受診の必要があり、原則入院です(少なくとも当院では)。病院ならまだしも、いったん帰った後に再度病院となるとご家族の負担は大きいです。しかし、痙攣止めの薬を使用すると再痙攣率が下がることが知られていて、ダイアップを使用していると再痙攣率は2%程度に下がります。およそ1/10です。なので、ガイドラインは、止まった時のダイアップ投与は全例に使用すべきではないが、髄膜炎脳炎、脳症などの所見が無い場合、やはり地域性、家族の不安を考慮して決めるのが良いだろうとの記載となっています。ですから、使う人と使わない人がいます。

また、最近では熱性痙攣には関係ないとされていた解熱剤も同じ熱の間に再痙攣することは防げるのではないかという論文も出ています。

まとめ

  • 5分以上続く痙攣、止まったように見えても様子がおかしい場合には救急車
  • 慣れない人が痙攣に落ち着いて対処することは困難なので慌てて救急車を呼ぶことは当たり前のこと
  • 痙攣は長引くと、脳炎、脳症、髄膜炎などでなくても脳に障害を残す可能性があるので早く止める必要がある
  • 救急受診する痙攣の多くは熱性痙攣だが、単なる熱性痙攣はほとんどの場合、将来てんかんにはならない
  • 変な熱性痙攣の場合、脳炎、脳症、髄膜炎を考えて慎重になる必要がある
  • ダイアップは熱性痙攣予防に有効だが、いったん起きた痙攣を止める効果はあまりない

 

<参考文献>

日本小児神経学会監修. 熱性けいれん診療ガイドライン2015

有馬正高監修. 小児神経学

高橋幸利. 新小児てんかん診療マニュアル

奥村彰久. 子どものけいれん・てんかん見つけ方・見分け方から治療戦略へ

Nishiyama M, et al. Demographics and outcomes of patients with pediatric febrile convulsive status epilepticus. Pediatr Neurol. 2015 May;52(5):499-503. 

奥村彰久. インフルエンザ脳炎, 脳症の前駆症状としての異常行動と熱せん妄. 小児内科 35, 1730-1733, 2003

Murata S, et al. Acetaminophen and Febrile Seizure Recurrences During the Same Fever Episode. Pediatrics. 2018 Nov;142(5).

熱性けいれん診療ガイドライン2015

熱性けいれん診療ガイドライン2015

 
小児神経学

小児神経学

 
子どものけいれん・てんかん 見つけ方・見分け方から治療戦略へ

子どものけいれん・てんかん 見つけ方・見分け方から治療戦略へ

 
新 小児てんかん診療マニュアル

新 小児てんかん診療マニュアル