小児科のあれこれ

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乳児の空気嚥下

空気を飲むのは意外と問題

空気を飲むとまず胃にたまります。するとまずは苦しくなったり胃が痛くなったり吐き気がしたり食欲がなくなったりします。炭酸飲料を飲みすぎたときなんかと同じような感じと言えばわかるでしょうか?

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胃の次は小腸、大腸と進んでゆき、今度は腹満、腹痛、そしてやっぱり食欲不振の原因となります。そしておならになって出てゆきます。

実は成人でも鼻づまり、特に鼻水が多かったり副鼻腔炎蓄膿症)で後鼻漏(鼻水が後ろ側からのどへと垂れていく)があると空気をよく飲みます。そこで、鼻炎や副鼻腔炎があると胸痛、腹痛、食欲不振、吐き気の原因となることがあり、場合によっては逆流性食道炎となります。
乳児の場合は体が未熟なのと言葉を話せないことから、空気嚥下でご家族が困る原因となります。

赤ちゃんが空気を飲み込むとき

①お母さんのおっぱいの出がとても良いとき

これが一番多い気がします。基本的には哺乳瓶より直接母乳のほうが、赤ちゃんは自分のタイミングで飲むことができるといわれています。しかし、お母さんの母乳がとてもよく出るとき、そのこと自体は良いことですが、赤ちゃんは口の中に勢いよく流れ込んでくる母乳とともにたくさん空気を飲んでしまうことが多いです。特に母乳が勢いよく出てくる人の場合、飲み始めにのどに勢いよく飛び込んできてむせることがあります。このことと、飲ませている側と反対側の乳首から母乳が垂れてくるのは母乳の出が良いことのサインです。

②鼻炎、鼻づまり

赤ちゃんは口呼吸はあまり得意ではありません。これは、口で哺乳し、鼻から呼吸するためです。しかし、鼻がふさがっていると口から呼吸するしかありません。すると哺乳の時により空気を飲み込みやすくなります。また、鼻水がのどに垂れ込んでくると、大人と同じようにそれを飲み込むときに空気も飲み込んでしまいます。特にRSウイルス感染症で肺のレントゲンを撮った時についでに移っていた腸管がガスでパンパンのことも良くあります。

③口の構造の問題

高口蓋という上あごが高めの状態だと、舌と上あごとの間のスペースが広くなり、空気をたくさん飲みこんでしまう原因となります。これは知らないと診断が難しいので気づかれないことも多いと思います。

赤ちゃんが空気を飲み込みすぎることで起きる症状

不機嫌

おなかが張ると赤ちゃんは苦しかったりおなかが痛かったりしますが、赤ちゃんは「痛い」とは言えないので、不機嫌となります。

嘔吐

赤ちゃんは胃の入り口(噴門)がゆるいため、胃酸が逆流する子が多いです。だから、少量嘔吐する吐乳では異常と言いません。ですから空気がたくさんたまっていると嘔吐の原因となります。

哺乳不良

胃や腸が空気でパンパンになることで余裕がなくなり、飲む量が少なくなることがあります。これは、1日に飲む量の合計が減ってしまう問題なタイプと、1回の飲む量は減るものの回数が多いために1日の合計量はしっかりあるタイプがあります。前者は体重増加不良となりとても問題です。後者は体重は増えますが、授乳回数が多くてお母さんは疲れてしまいます。

ウンチの回数が多い、おむつかぶれ

飲み込んだ空気は最終的におならとして出ていきます。特に母乳の赤ちゃんは便が非常に柔らかいことが多く、大きなおならだと一緒に便が出てしまいます。そのため、1日に10回以上ウンチが出ることがあります…というより、おむつの中をのぞくたびに便が少しずつついている感じになります。そのうち数回多めの量が出るという子が多くて、それが本来の排便です。そして便が多いことでウンチがお尻についている時間が無くなること、お尻をふく回数が多くなることでおむつかぶれの原因となります。

空気をたくさん飲みこんでしまうときの対処

①飲み込む量を減らす

母乳の出が良いときは、最初の勢いが強い分を絞ってあげてそのあとで哺乳することで空気を飲み込む量を減らすことができます。鼻水が問題の場合は下のような器具で鼻水を吸い取ってあげることで改善できます。口の構造の場合は、専門の耳鼻科や口腔外科などで装具を作るなどの対処があります。 

 

 

②口から空気を出させる

 げっぷをさせるということですね。まとめてげっぷができない子もいるので、飲ませている最中にげっぷをさせてあげると良い場合があります。それでも難しい場合は、授乳後しばらく上半身を上気味にしてあげることで空気が胃の上側、つまり食道側にくるので飲んだものや胃液でなく空気を自然と出してくれます。

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抱っこだと、首の座ってない赤ちゃんをずっと縦抱きにするのも大変なので、下の絵の右のように自然に斜めになる抱っこでよいです。もしくはクッションやタオルなどを体の下に入れてあげる方法もあります。こっちの場合、頭の下に枕を入れて首を前屈させてしまうと左のように気道が圧迫されて苦しくなってしまうので注意してください。

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③おならを出させる

腸の空気はおならとして出します。そこで、有用なのが綿棒刺激です。綿棒の先にワセリンなどの潤滑油をつけて校門の中に1cm程度入れて肛門を優しく拡げてあげることで便やガスが出てきます。力いっぱいぐりぐりして腸を傷つけないようにしてください。

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