小児科のあれこれ

地方の小児科で感じたこと、勉強したこと、本やグッズのレビューなど

川崎病③治療不応について

詳しい原因は不明ですが、川崎病は体質があって、それをなんかが刺激して発症すると考えられています。講演などを聞く限りでは、体質的なものは自然免疫系に関与する自己免疫的な病気の素因が考えられているようです。また、地域的に流行する傾向があることで感染症やなんかその時期に増える物質が関係すると考えられています。単なる感染症ではないので、川崎病自体が人に感染することはありませんが、家族など同じ体質を持つ人で同じ原因で同時発症することはあり得るといえます。

治療は基本のガンマグロブリン、自己免疫疾患とくればのステロイドのほかに難治例であれば、シクロスポリンという免疫抑制剤インフリキシマブという抗体製剤などが使用され、どうしようもなくさっさと炎症を沈静化させたい場合には血漿交換という血の入れ替えみたいな治療をすることもあります。

この治療で、まずガンマグロブリンアスピリンをするのが通例ですが、それが無効(治療不応)である場合に別の治療を行うことになります。治療後の血液検査でガンマグロブリンにあたるIgGという項目をみて3000mg/dL以上あればガンマグロブリンでは効かないタイプと判断する方法もあります。また、ガンマグロブリンが効かない場合でも、熱がほぼ下がらず全く効かない場合と、高熱がでなくなったり、いくつか症状が消えたりとある程度は効いている感じなのに、微熱が続いたり、血液データが改善しきらなかったりと中途半端に効く場合とを経験します。

川崎病と悩むものの代表に全身型特発性関節炎(sJIA)というものがあります。内科であれば成人Still病という病気に似ています。これも原因が不明(膠原病は基本的に不明)で、「これがあればsJIA」というものがなく、症状で診断します。最近はサイトカインプロファイルという炎症物質の分析を行い、「sJIA様の炎症反応が起きている」と判断する方法もあるようです。

そして川崎病とsJIAを合併することがあります。僕自身診たことがありますし、学会での発表を聞いたこともあります。このタイプはおそらくは、何らかのきっかけで自己免疫の炎症が起こり、炎症物質の出方が川崎病とsJIAの両方を引き起こすような感じだったんだと思います。

わかりにくいやもですが、図のように(本当はもっとたくさんの)炎症の道があり、その基本の道を食い止めるのがガンマグロブリンなんだと思います。で、全く効かない場合には別の道を使用、複数の治療を必要とする場合には複数の道を使用している、という感じなんだと思います。

f:id:takkunatonnbo:20190911141728j:plain

自分で最後まで治療した患者さんで最も難渋したのは、ガンマグロブリン→ガンマグロブリンステロイド(パルス)→ガンマグロブリンステロイドでなんとか沈静化した症例でした。幸い心臓の血管は無事でした。同じような治療を繰り返しているのに最終的に落ち着いたのは、そのたびごとにしばらく熱が下がっていたのでそれぞれは有効だったけど根本治療にはならずおおもとの炎症が落ち着くのに時間がかかったということなのかもしれません。

 

いったん治った後の再発について

www.blog.takkuna.com

そもそも川崎病って?

www.blog.takkuna.com