小児科のあれこれ

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川崎病

 川崎病は年間15000人以上と意外と多い病気です。全身の血管に炎症を起こし、さまざまな症状を起こします。小児科医としてはありふれてはいますが、色々と悩むことも多い病気です。現時点で④まであります。

川崎病は診断に悩む

この病気は診断に悩むことも多い病気です。

診断基準は

①熱、②眼球結膜充血、③口の症状(発赤、苺舌)、④頚部リンパ節腫脹(痛いことが多い)、⑤手足の症状(手のひらや足の裏の発赤、指などのむくみ、回復期に指の皮がむける)、⑥発疹

の主要6症状のうち、5症状以上を満たし、他の疾患が否定されること

となっています。これらの症状は単体ではよくある症状ですのでそろっていることが重要です。また、BCG接種後6か月以内の子ではBCG痕が赤くなる川崎病の可能性が高いと知られています。

この基準だと「他の疾患が否定されること」が問題です。例えば鑑別が問題となることの多い全身型若年性特発性関節炎だと「2週間以上続く発熱」が診断基準にあるのですが、川崎病では2週間待つことはあり得ません。また、他の病気に川崎病が合併することはあるので「他の病気があるから川崎病でない」とは言えません

また、川崎病はいまだに詳しい原因は分かっておらず、「この検査結果だから川崎病だ」という検査もないので、川崎病の主要症状を5つ以上満たした場合はよほどの理由がない限り川崎病の治療を行っています。

そして、4症状以下しか満たさない不全型川崎病という川崎病もあるので、さらに混乱します。

結果、「川崎病」という病名は乱用気味にも感じますが、仕方ない面もあります。

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川崎病を診断することの重要性

なぜ我々が川崎病を、大げさに言うとやや過剰に治療するのかというと合併症、後遺症が怖いからです。

細かいことを言うと色々あるんですが、心臓の血管である冠動脈にコブ(冠動脈瘤)を作ることがあるというのが一番の問題です。軽度の瘤なら自然に治ることもあるのですが、大きいと治らなかったり逆に細くなってしまったりします。

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すると冠動脈が詰まってしまう原因となります。冠動脈が詰まる病気を心筋梗塞と言います。冠動脈は心臓自体に血を送るので、冠動脈が詰まると心臓に血が行かなくなり、心臓が死んでしまう原因となります。心臓が死んでしまうとその人も死んでしまう…

20代で心筋梗塞となった女性がそのときの検査で冠動脈の瘤が見つかり、おそらく小さいときに川崎病が見つからずに勝手に治ってしまったんだろうと循環器内科の先生が言っているのを聞いたことがあります。

川崎病死亡例では冠動脈瘤が破裂してしまって亡くなった方が結構いるそうです。

この動脈瘤を作らないことが川崎病の最も大きな治療目標となっていて、そのためには「熱が出て10日以内に解熱すること」が大事とされています。

そのためには早く治療をしなければなりません。

 

治療編に続きます

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