小児科のあれこれ

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小児感染症のトリセツ

最初のバージョンである、『小児感染症と抗菌薬のトリセツ』は当時長野県立こども病院の笠井先生(現在は兵庫県立こども病院)によって書かれた本でした。当時、僕は小児科の後期研修医で、内容は詳しくはないもののシンプルにまとまっていて使いやすかったです。参考にしながら診療していました。実際の本の他に、タブレット電子書籍版を入れていました。僕の抗菌薬の処方するときの量はこの本の影響が強いです。笠井先生はこの前に小児の抗菌薬の本を出されていましたが、小児感染症診療の実際というような本は この本の後に増えてきたように思います。

感染症の本にありがちなご自身の思想を前面に出した感じでないのも好印象でした。

長野県立こども病院 小児感染症と抗菌薬のトリセツ

長野県立こども病院 小児感染症と抗菌薬のトリセツ

 

これが改訂したと思い、『小児感染症のトリセツREMAKE』を買ってみました。

でも、改訂というより新しい本って感じですね。著者も変わっていますし。だからREMAKEなのでしょうか?笠井先生がご高齢ってわけでもないのに…お忙しいのでしょうか…

今は自分の位置が変わり、他に読むべき本があったり、学会発表や講義の準備がたまっているので通読してはおらず、気になるところを拾い読みをしているのですが、詳しくなった半面、前のバージョンの良さがかなり無くなっているように感じます。シンプルさが失われというのは伊藤先生ご自身も自覚されているのか、要約版との2冊セットとなっています。載っている病名も増えましたし、オリジナルにはなかった病気の基礎知識の記載が増えました。でも、成書よりは詳しくないです。さっと参照するのには今一つですが、研修医が通読するのにはよいのかもしれません。

また、なによりも、成人の感染症の本にありがちな著者の正義感と思想が前面に出ている感じに変わってしまったのが残念(でも、感染症内科のエキセントリックな人よりはマイルドです)。

ただ、感染症系の学会やセミナーで、笠井先生や宮入先生(有名な岩田先生の『抗菌薬の考え方、使い方』の第2版、第3版で小児の項目を書いてらっしゃいました)など有名な先生方も参加された症例検討など見ていると意外とみんなこんなきれいごとで診療してないな、実診療は教科書通りにいかないなっていうのが分かります。なので、研修医は本での一方向のインプットだけでなく、学会やセミナーなどにも積極的に参加して欲しいと思います。

小児感染症のトリセツREMAKE

小児感染症のトリセツREMAKE